| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-058 (Poster presentation)
ツバメ目ツバメ科のツバメHirundo rusticaやコシアカツバメHirundo dauricaは、人工的な建築物の壁や天井に、土を主な材料として巣作りをする。いわゆるツバメは、土に藁を混ぜ込んだものを材料として、民家や商店などの壁にお椀型の巣を作る。一方、コシアカツバメはツバメとは異なり、藁を含まず土のみを材料として、学校や役所など比較的大規模な建築物の、天井と壁の2面または3面に接するように、とっくり型の巣を作ることが多い。
これまでツバメの巣は土と藁だけではなく、唾液も使用して作られると言われてきたが、これを明確に示した報告はない。そこで、本研究においては、ツバメ類の巣作りに唾液が使われているのかどうかを明らかにするため、一般に動物の唾液に含まれる糖タンパク質の「ムチン」の有無を確認し唾液が使用されていることを明確にすることを目的とした。
ツバメ類の口腔内から直接唾液を採取することは困難なため、使われていないツバメ類の巣を、建築物の所有者に許可を得て取り外し、巣に「ムチン」が含まれるかどうか「ムチン」分析キットを使用して検討した。ツバメおよびコシアカツバメの巣を蒸留水で懸濁後、オートクレーブし、濾過した上澄をエバポレーターにて乾固させ、分析サンプルとした。これを蛍光測定により巣の中の「ムチン」の分析を行った結果、いずれの巣からも「ムチン」が含有していることを確認できた。なお、巣の材料には、水田や河川敷などの湿った土を、ツバメ類がくちばしで集めたものを用いるが、屋外の土から「ムチン」は確認されなかった。これらの結果から、ツバメとコシアカツバメの巣作りには、唾液が使用されていることが示唆された。