| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-061  (Poster presentation)

長期記録から見えたニホンミツバチの分蜂回数の変化
Long-term records show the recent change of swarming frequency per colony in Japanese honey bee

*森井清仁, 坂本佳子(国立環境研究所)
*Kiyohito MORII, Yoshiko SAKAMOTO(NIES)

ニホンミツバチApis cerana japonicaにおいて、女王が働きバチの一部を引き連れて新しい営巣地へ飛び立つ”分蜂”は、自然環境下で群数を増やす唯一の手段であり、通常、1回から複数回生じる。本種の飼育者の中には、分蜂回数が近年増加傾向にあるのではないかと感じる人が少なからず存在し、その真偽の検証と群への影響評価は、本種の保全を考える上で意義深い。本研究では、全国の飼育者から過去の分蜂記録を収集し、群あたりの平均分蜂回数などの基礎的なデータを整理するとともに、分蜂回数の経時的な変化について解析した。
 過去の分蜂回数の記録について、33名から349群(2000~2022年)のデータを収集した。分蜂回数の経時的な変化を調べるために、ポアソン分布を仮定したベイジアンGLMを用いて解析した。目的変数は各群の分蜂回数、説明変数は分蜂を観察した年および、越冬群か分蜂群か(越冬群;昨年から群が存在し、越冬後に分蜂した群、分蜂群;同年にすでに分蜂を経験した群が時期を開けて再度分蜂した群)とした。さらに、分蜂開始時期と分蜂回数の関係を調べるため、越冬群と分蜂群ごとに、分蜂が観察された月別(3~8月)の平均分蜂回数を計算した。
 2000~2022年の間、越冬群は平均約2.5回、分蜂群は平均約1.8回分蜂していた。GLMによる解析の結果、分蜂回数に対して、年は有意な正の効果を与えており、分蜂回数は1年ごとに約1.03倍になると推定された。つまり、分蜂回数は年が経つにつれて緩やかに増加していたと考えられた。また、越冬群と分蜂群ともに、早期から分蜂した場合に平均分蜂回数が多く、特に3月に分蜂した群の平均分蜂回数は4回を超えていた。3月の平均気温が近年上昇傾向にあることを踏まえると、分蜂回数の増加は、分蜂開始時期が早まったことにより生じた可能性がある。今後、さらに詳細なデータを収集し、本仮説の検証を行う。


日本生態学会