| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-069 (Poster presentation)
アオスジアゲハ幼虫は新葉が赤色を呈するタブノキを食樹としている。新葉の赤色は、防御物質を含むことを植食者に対して宣伝する警告色であることが最近わかってきた。しかし、アオスジアゲハはタブノキに適応しているので、赤い色はむしろ餌の存在を示す刺激となっているのかもしれない。そこで、本種幼虫が赤い色を好むかどうか調査した。タブノキの成葉は硬いため、若齢幼虫は噛みつくこともできず、老齢幼虫は噛みつけるが食べても成長は悪い。つまり本種幼虫はタブノキの新葉を選ぶ必要があるが、野外で調査したところ実際にほぼ新葉のみを摂食していた。また、飢餓状態に置いた老齢幼虫に赤い背景と緑の背景から一方を選択させる実験を行ったところ、有意に高い割合で赤い背景を選んだ。このことから、本種幼虫は赤い色を餌の質を示す情報の一つとして利用していると考えられる。この現象はスペシャリスト植食者が植物の防御物質を摂食刺激物質として利用する現象と相似の進化として理解できる。