| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-071  (Poster presentation)

宿主植物を共有するが排他的に分布するハナホソガ2種の遺伝構造比較
Comparison of genetic structure between two Epicephala species sharing host plants but are exclusively distributed

*古川沙央里(京大・生態研, 龍大・農), 川北篤(東大・理・植物園)
*Saori FURUKAWA(CER, Kyoto Univ., Ryukoku Univ.), Atsushi KAWAKITA(Univ. of Tokyo)

コミカンソウ科植物とハナホソガ属ガ類(以下、ハナホソガ)は植物と種子食性の送粉者が互いに強く依存し合う送粉共生系のひとつである。ハナホソガの雌成虫は、宿主植物の雌花に能動的に授粉した後、その子房内部に産卵する。孵化した幼虫は果実内に複数ある種子のうち数個のみ摂食して成熟するので、幼虫の食害を免れた種子により、植物も子孫を残すことができる。

日本に生息するハナホソガ2種(Epicephala obovatellaEpicephala corruptrix)は、コミカンソウ科植物のカンコノキとその姉妹種ヒラミカンコノキを宿主として共有する。和歌山から沖縄本島まではカンコノキが、八重山諸島以南はヒラミカンコノキが分布する。このため、生息地域でハナホソガの利用する宿主が変わる。E. obovatellaの幼虫は上述したように種子食者だが、もう一方のE. corruptrixはハナホソガの中では稀な虫こぶ形成者である。ハナホソガ2種の生活史と宿主植物への貢献度から、E. obovatellaと比べてE. corruptrixはより寄生的な種であることが明らかになっている。

本研究では、これらハナホソガ2種の分布が混在している地域に着目して、ハナホソガの地理的分布と遺伝的構造を調べることで、ハナホソガ2種の分布の決定要因を明らかにすることを試みる。


日本生態学会