| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-077 (Poster presentation)
生物多様性保全への社会的関心が高まってきており、地域性種苗を用いた緑化にも注目が集まっている。地域性種苗を用いる際は、緑化対象地周辺で対象とする植物が自生する場所を探し、そこから種子等を採取して育苗するというプロセスを踏む必要がある。本研究では、在来の草原生植物を用いた緑化を行うことを想定し、苗づくりの種子ソースとしてその自生場所を探索するために使えるマップを作成することを目的とした。本研究では、草原生植物の分布を調べるため、市民調査アプリ「Biome」で2019年-2021年に収集されたデータを用いた。2021年には「野原の野草をみつけよう」と題して春編(12種)、夏編(12種)、秋編(19種)の3回の「クエスト」と呼ばれるアプリ内のイベントを開催した。データは対象とした42種の合計で27,492データが集まった。最もデータ数が多かったのは、キキョウで3022データ(以下括弧内にデータ数を示す)、ネジバナ(1773)、センニンソウ(1772)で、逆に少なかったのはスズサイコ(33)、キジムシロ(69)、トモエソウ(95)であった。得られたデータの位置情報を見ると、データは都市部を含む全国各地のデータが収集されていることがわかった。ヘビイチゴなどの一般的に見られる種については都市内でも広く確認されており、ワレモコウなどの都市内での自然分布が限られている種は郊外の林縁部や都市の孤立した緑地などで取得されていた。ただし、キキョウやホタルブクロなどは一般に鉢植え等で栽培されているものもあるためか、都市内でも多くデータが取得されていた。地域性種苗の種子ソースは都市近郊で探す必要があるため、「Biome」を用いてこれらを探索することは有効であると言える。ただし、栽培されることの多い種などに関しては、都市内で得られたデータには注意しながら用いる必要がある。