| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-093 (Poster presentation)
野外で同時期に開花している植物は、しばしば異なる植物種間で同じ種類の送粉者を共有することが知られている。送粉者の共有は、送粉者を共同誘引して訪花頻度や繁殖成功を高める(正の効果)と雑種化や繁殖干渉などを通じて繁殖成功を低下させる場合(負の効果)が知られている。
こうした相互作用は、現実に観察される植物群落の構造にも影響すると考えられており、同時開花する植物の花の色や形の組み合わせに着目した研究が行われてきた。しかし、これまでの研究は特に草本群落に着目したものが多く、森林植生を対象にしたものは限られている。そこで本研究では暖温帯常緑二次林に生育する植物を対象に、同時開花植物の花形質やフェノロジーの類似度を、植物の生活型に着目し比較考察した。
調査は鹿児島大学農学部附属高隈演習林の林道で行った。演習林内に約2kmの調査ルートを設定し、開花した虫媒花植物の種名、花筒長、花筒幅、花弁のスペクトル、総称性を記録した。花色については、花弁の分光反射率を分光器で測定し、その値に基づいてある種の花が同時開花する他の花に比べて目立つのか、あるいは地味なのかを判断する指数を算出した。
調査の結果、①林冠種は比較的短い開花期間の中で色や形の似通った種が開花している一方、②林床種では比較的長い開花期間の中で、多様な色や形態の花が開花しているという傾向がみられた。このことから、林冠植物では林床植物よりも種間送粉が相対的に生じやすい状況が生まれていると考えられた。このことは、種間送粉による正の効果と負の効果の相対的な大きさは、林冠種と林床種では、異なっている可能性を示唆している。