| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-094  (Poster presentation)

大規模撹乱から10年間の砂浜植物群集の変化:仙台市の事例
Changes in coastal plant communities over 10 years after a large-scale disturbance: a case in Sendai City

*富田瑞樹(東京情報大学), 菅野洋(東北緑化環境保全), 平吹喜彦(東北学院大学), 原慶太郎(東京情報大学)
*Mizuki TOMITA(Tokyo Univ. of Info. Sci.), Hiroshi KANNO(TRK Co., Ltd.), Yoshihiko HIRABUKI(Tohoku Gakuin Univ.), Keitarou HARA(Tokyo Univ. of Info. Sci.)

 撹乱からの群集の再生過程を長期的に記録することは生態系の復元力を明らかにする上で重要である.津波による大規模撹乱に曝された仙台市沿岸部の砂浜域における植物群集の再生過程を明らかにすることを目的として,津波翌年で復旧工事が開始された2012年6月,復旧工事が一段落した2018年6月,更に4年後の2022年6月に植生調査を実施した.
 仙台市の砂浜域において汀線に平行する620mの調査線を4本設置し,調査線沿いに約20m間隔で植生調査を実施した.調査線は汀線側から順に,砂浜域1,砂浜域2,防潮堤前面域,防災林域に区分され,砂浜域1と2は,津波後の人為は少ないが,潮風や飛砂の影響を強く受ける.防潮堤前面域は旧防潮堤後面の洗掘域に該当し,現在は防潮堤表法尻部の捨石や,一部で実施された防潮堤の覆砂試験等の人為と,潮風や飛砂の影響が及ぶ.防災林域は防潮堤の後背部で,津波前に成立していた低木クロマツ林域に該当し,現在は防災林復旧よる盛土の影響が顕著な領域である.
 10年間で種数は4立地とも増加したが,帰化種数は防災林域でのみ増加し,他の立地ではほぼ変化しないか,減少した.防潮堤海側よりも潮風や飛砂の影響が少なく,人為の顕著な防災林域で帰化種が分布を拡大していた.砂浜植物種数は4立地とも増加したが,立地ごとの出現率の傾向は種間で異なった.例えば,ハマニガナの出現率は防潮堤の海側で顕著に増加したが,コウボウシバの出現率は砂浜域で大幅に低下しながらも防災林域では顕著に増加した.
 防災林域における帰化植物の分布と4立地における砂浜植物の分布が10年間で拡大していること,砂浜植物における立地ごとの出現率の傾向が種間で異なることが示され,津波撹乱および復旧工事後の立地特異的な砂浜植物群集の再生と,人為の顕著な防災林域への帰化植物の侵入・定着が並行していると示唆された.


日本生態学会