| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-097  (Poster presentation)

里山における蜜源及び花粉源植物の開花フェノロジー
Flowering Phenologies of Honeybee Plants in Satoyama

*西尾孝佳(宇都宮大学)
*Takayoshi NISHIO(Utsunomiya Univ.)

高齢化および過疎化が進行する里山では,手入れの停滞による荒れた耕作放棄地や里山林の増加が,景観の悪化や野生鳥獣被害などの問題を引き起こしている。荒れた土地を巡る問題の解決には,土地の省力的かつ持続的な利用が重要な役割を果たすとされ,そのひとつの手段として,里山の恵みを活用した養蜂が期待されている。しかし,養蜂の生産性の向上および収量の安定には,農地における菜の花や蕎麦などといった蜜源植物の栽培のほか,野山に自生する蜜源・花粉源の確保も不可欠であり,その実現には計画的な野山の手入れが必要となる。そこで本研究では,養蜂の効率的な管理と運営につなげる情報の収集を目的に,里地里山における蜜源および花粉源植物の分布状況や開花フェノロジーを記録し,植生タイプで比較することとした。調査は栃木県那須烏山市大木須で実施した。2021年3月から,2~4週間の間隔で,地域内の集落から山に至る3つのルート(総距離約4.7km),および各ルート沿いに設定した50の固定観測地点(各400㎡,草本群落13地点,低木群落14地点,二次林13地点,スギ・ヒノキ植林10地点)で,野生および栽培植物の開花状況を記録した。記録した植物がセイヨウミツバチの蜜源・花粉源となるかどうかは,図鑑および国内外の関係する文献を用いて確定した。これまで対象地域で開花が確認された植物は全562種で,そのうち蜜源・花粉源植物と推定される植物は235種であった。植生タイプ別では,蜜源・花粉源植物の開花が,草本群落68種,低木群落63種,二次林61種,植林31種で確認され,植林は他の植生タイプと比べて開花種数が有意に少なかった。各植生タイプの平均開花種数は,春と秋に比べて夏の減少が顕著にみられた。一方,地域全体では,蜜源・花粉源植物の開花種数は春から秋にかけて多少の増減を伴いながら徐々に増加した。


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