| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-098  (Poster presentation)

琵琶湖岸の希少植物保護区周辺の草本群落間で見られる種組成の違いについて
Herbaceous community species composition in lakeshore conservation areas around Lake Biwa

*大槻達郎(滋賀県立琵琶湖博物館), 西田謙二(滋賀県植物研究会)
*Tatsuo OHTSUKI(Lake Biwa Museum), Kenji NISHIDA(Soc for  floral study in Shiga)

滋賀県は数少ない内陸県であるが、琵琶湖岸の砂浜には海浜由来の植物が複数種生育する。現在砂浜の植生遷移は進み、一部の海浜植物は減少しているため、滋賀県では保護区を指定して希少種の保全を進めている。先行研究では、ハマゴウ(県RDBの希少種)保護区周辺で外来種の増加が確認されている。この保護区と湖岸道路の間には防砂林が植栽されているが、湖岸道路の端にはミチバタナデシコ、マンテマ等の外来種が繁茂している。また、汀線には多くの流木や水草が流れ着き、その周辺には水流散布された植物が季節ごとに出現する。種構成の変化、特に外来種の種数や生育面積の増加は、今後の保全活動に影響する可能性がある。我々は、2021年に汀線周辺から内陸に向かって4方形区を作成し、植物社会学的調査を行うことで、汀線-内陸の草本群落間で見られる種構成の違いを明示し、外来種の動態を確認することにした。
群集クラスター解析では、4方形区とも異なる群集組成であることが明らかとなった。汀線区域では、イタチハギやアメリカセンダングサ、オオフタバムグラ等の外来種が定着するとともに、オニグルミのような渓畔林の植物も侵入していた。少し内陸部のタチスズシロソウ生育区域では、チガヤやフシグロ、スミレを中心とした多年草が繁茂し、在来種の種数が比較的多かった。防砂林周辺には、エノキやアカメガシワなどとともに、ハイゴケなどコケ植物も広がっていた。この年の夏にクロマツを中心とする防砂林の間引きおよび下草の除去が行われた。この下草は、湖岸の砂や動植物の移動を妨げていると考えられていたが、除去後には確かに湖岸道路に生育する植物の侵入が確認された。本調査によって、湖岸から外来種が多く運ばれる一方、内陸部は在来種が保持されていることが明らかとなった。今後の保全を考慮すると、汀線周辺に定着した外来種の除去が必要である。


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