| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-099 (Poster presentation)
種が排他的な空間的分布を示す現象は「すみわけ(habitat partitioning)」と呼ばれる。すみわけは環境勾配や様々な種間相互作用が原因となって生じると考えられている。同属近縁種であるオオバコとヘラオオバコは、滋賀県立大学構内において広く分布する。両種の分布に関するこれまでの研究で、すみわけが示唆されているが、オオバコのみが生育可能なニッチは示されている一方で、ヘラオオバコのみが生育可能なニッチについては示されていない。また、両種とも生育可能なニッチにおける両種の分布や種間相互作用については明らかにされていない。そこで本研究では滋賀県立大学構内において分布調査を行い、両種のすみわけの実態を把握した。さらに生育環境について、踏圧・光環境・刈り取り圧の3つの要因を調査し、それらが両種のすみわけに与える影響の解明を試みた。
オオバコとヘラオオバコは構内のほぼ全域(32 ha)で排他的に分布していたが、一部では同所的に分布していた。しかし、この地点について詳細に分布調査(1 m×5 m)を行った結果、両種は数m2の小さな空間スケールで排他的に分布していることが明らかになった。
生育環境から両種が適応するニッチを分類したとき、光制限がある刈り取り圧の高い環境ではオオバコのみが生育可能であった。一方、光制限がなく踏圧と刈り取り圧がともに低い場所ではヘラオオバコのみが生育可能であった。これらの環境以外は両種ともに生育可能なニッチであった。このように本研究で新たに刈り取り圧を考慮することにより、オオバコ・ヘラオオバコのみがそれぞれ生育可能なニッチについて示すことができたが、両種共通のニッチにおいてなぜ排他的に一方の種が分布するのかは不明である。このような場所では、繁殖干渉、他感作用、資源競争といった何らかの種間相互作用が種の分布に影響している可能性が考えられる。