| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-100 (Poster presentation)
東・東南アジアでは、各気候帯で特有の群集フェノロジーが観察されてきたが、それらは体系的に整理されていなかった。そこで、本研究では、東・東南アジアの展葉・開花・結実フェノロジーの体系的な理解を目的として、①被子植物の祖先的な分類群が生育する熱帯山地林の展葉・開花・結実フェノロジーの解明、②東・東南アジア9地点における展葉・開花・結実フェノロジーパターンの比較を行った。①のために、乾季と雨季があるベトナム南部の熱帯山地林で、5調査区を設置し(標高1660–1920 m)、5調査区の個体数上位の計91種の展葉・開花・結実の有無を3ヶ月毎に記録した。その結果、5調査区全体の観察対象91種全てが雨季始めに展葉したが、観察期間中に開花・結実した種は65、54種にとどまり、一年の中で明瞭なピークは見られなかった。これより、1年周期で咲く種と数年に一度咲く種の共存が示された。②のために、東・東南アジアの9地点(温帯林2地点・亜熱帯林2地点・季節性熱帯林1地点・熱帯雨林2地点・熱帯山地林2地点)における先行研究の展葉・開花・結実フェノロジーデータを用いて、クラスター分析を行った。その結果、熱帯山地林2地点(マレーシア・キナバルとベトナム・ビドゥップヌイバ)の気候(日長・気温・雨量)のパターンは異なっていたが、フェノロジーパターンは類似した。これより、森林のフェノロジーに影響する他の気候要因の存在が示唆された。そして、①②の結果に基づき、群集のフェノロジーが、各地の気象と相関して多様化する過程を示す新たな仮説を構築した。