| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-103 (Poster presentation)
東北地方は日本海側から太平洋側にかけてわずか150kmの間で気温や積雪量といった環境条件が大きく異なっており、このような環境の違いによって森林の林分構造や種構成地域によって大きく異なっていることが知られている。また、将来にわたる気候変動の影響で森林植生が変化すると言われているが、植生変化の環境応答を把握するためには樹種ごとの成長量の環境応答特性だけでなく、植生遷移も含めた林分構造の変化にも着目する必要がある。そこで本研究では東北地方の日本海側から太平洋側にかけての森林において毎木調査による森林レベルでの現存量の変化と年輪解析における個体レベルの成長量の変化を合わせて考えることにより、樹種ごとの成長量の環境応答特性が林分構造の変化にどのように寄与しているか明らかにすることを目的とする。
本研究では日本海側から太平洋側にかけてほぼ同緯度の天然林において毎木調査を2度おこない、種組成や現存量、成長量を測定した。また、各森林において代表的な樹種の年輪コアを採取し、年輪解析をおこなった。アメダスや気象官署のデータと気温ロガーのデータを組み合わせて過去の長期的な気候データを推定し、標準年輪曲線との相関を解析した。日本海・太平洋両沿岸側では気温が高く、コナラが優占し、多様度も高かった。一方で、山形盆地より西側の日本海側では積雪量が多くブナが多く生育していた。しかし、成長量を見るとこのような優占種の成長量が必ずしも高いとはいえず、単純に気温が高いからコナラの生育がよく、積雪が多いからブナの生育がよいとはいえなかった。また、樹種ごとの年輪成長の環境応答性も林分によって異なり、樹種の成長には環境要因だけでなく林分構造も大きく寄与することが明らかになった。