| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-108  (Poster presentation)

近縁外来種の個体数頻度が在来水田雑草の繁殖成功に及ぼす影響
Possibility of reproductive interference between native and non-native weeds in rice paddy field

*鎌田諒, 亀山慶晃(東京農業大学大学院)
*Ryo KAMATA, Yoshiaki KAMEYAMA(Grad Sch of Tokyo Univ Agri)

モトタカサブロウEclipta thermalis Bung(以下モト)は在来の一年生水田植物で、同属のアメリカタカサブロウEclipta alba (L.) Hassk(以下アメ)が移入して以来、減少傾向にあるとされている。両種は雑種を形成することが示唆されているが、各分類群の遺伝的組成、空間分布、結実成功などは不明である。本研究の目的は、モトの個体数減少がアメとの相互作用に起因している可能性について、浸透性交雑(=非対称的な遺伝子浸透)および狭義の繁殖干渉(=異種花粉の付着による結実率の低下)という二つの視点から検証することである。
調査は神奈川県秦野市の棚田でおこなった。当該の棚田は周辺の水田から300m以上隔離された0.2haの小さな谷戸で、2002年に復田されてから伝統的な水田稲作が継続されている。この棚田全域をカバーするように一辺2mのメッシュを作成し、計235個体から葉と果実を採取した。葉は12遺伝子座のSSRマーカーでジェノタイピングをおこない、STRUCTRURE解析で遺伝的クラスターを推定した。採取した果実を用いて結実率(種子数/胚珠数)を算出するとともに、遺伝的分類群および空間分布との関係を検証した。
STRUCTURE解析の結果、採取個体はモト60個体、アメ138個体、雑種37個体に区分された。雑種の遺伝子型は多様であり、様々な雑種後代が形成されていた。また、アメは棚田全域、モトと雑種は棚田下部に分布していた。アメおよび雑種の結実率は同等で、モトよりやや低く、モトの結実率は棚田上部ほど低下する傾向にあった。
モトとアメは両方向に遺伝子浸透を起こしていたが、個体数が少なく、雑種と分布が重複しているモトは、浸透性交雑の影響をより強く受けることが考えられる。雑種の稔性低下の程度は比較的小さく、繁殖干渉の影響は少ないことが示唆された。


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