| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-115  (Poster presentation)

年次間で変動する生物季節下での、トドマツの雌花芽生産に有効な温度条件について【B】
Effective thermal conditions on seed-cone bud production in Abies sachalinensis under annually varying phenology【B】

*関剛(森林総研北海道)
*Takeshi SEKI(FFPRI, Hokkaido)

樹木における当年枝の成長開始時期は年次間で変動する。当年枝の成長開始は温度条件に強い関わりがあることから、当年枝上で花芽が形成される樹種では、花芽形成に関わりの強い時期も温度条件と関わっている可能性がある。このため、花芽形成に関わりの強い時期が暦日よりも温度条件と関わる樹種も存在する可能性がある。トドマツは当年枝上で花芽を形成する樹種である。当年枝の伸長期間は主に夏至以前である。個体ごとに過去の雌花芽生産履歴を追跡した、北海道南西部・中山峠付近の調査地で、付近で記録された気象データをもとに、1) 雌花芽形成に強く関わる時期は暦日と有効積算温度のどちらとの関係が強いか?、について一般化線形混合モデルで比較し、2) 雌花芽形成に強く関わる時期では当年枝はどのような成長段階にあるか?を観察した。反応変数は、林冠木7個体17年間における、3-5年生の枝主軸上の雌花芽数とした。説明変数は、当年枝の伸長期間を含む6月平均気温、および2段階の温度積算によって算出した有効積算温度とした。具体的には、1) 2段階目の温度積算起点を、当年枝の伸長開始期前後を含む範囲に存在するように、温度閾値0、1、3、5、7、9°Cそれぞれに対し1月1日起点、10°C·日間隔の有効積算温度によって設定した。2) 2段階目の温度積算起点、58起点に対し、それぞれ7、10、14、17日間積算して有効積算温度を得た。この温度積算における温度閾値は、積算起点設定時の値を用いた。全体で233のモデル間で比較を行い、「温度閾値7°C、90°C·日到達翌日を起点、積算期間7日間の有効積算温度、正の効果」を最適モデルとした。このモデルの2段階目の積算期間における観察では、当年枝は中軸の伸長増大期前で、針葉サイズが増大していた。トドマツの雌花芽形成においては、針葉サイズの増大時期における高温に促進効果があることが示唆された。


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