| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-117  (Poster presentation)

福島県に生育するコシアブラの葉内の放射性セシウム及び各種元素濃度の季節変化【E】
Seasonal change of concentrations of radioactive cesium and various elements in leaves of Chengiopanax sciadophylloides grown in Fukushima Pref.【E】

*香山雅純, 三浦覚, 篠宮桂樹(森林総合研究所)
*Masazumi KAYAMA, Satoru MIURA, Yoshiki SHINOMIYA(FFPRI)

山菜として食されることもあるコシアブラは、これまでの調査から放射性セシウム (Cs-137) を植物体内に蓄積する特徴を持ち、原子力発電所事故から10年を経過しても濃度が低下していないことが報告されている。葉のCs-137濃度には季節性があり、春先に最も高く、徐々に低下する傾向がコナラで報告されている。しかし、コシアブラのCs-137濃度も同様の傾向を示すかは明らかにされていない。そこで、コシアブラのCs-137をはじめとする葉内元素濃度についての吸収特性と季節変動を把握することを目的とした。
調査地は、福島県田村市内のコシアブラが多数生育している山林を4カ所設定した。2021年度の調査から、コシアブラの葉のCs-137濃度は斜面位置によって異なる傾向があるため、試験地では斜面上部・中部・下部それぞれから樹高が3 m以上のコシアブラを5個体ずつ選定した。コシアブラの葉は2022年4月27日、6月2日、7月22日、9月8日、11月1日に樹冠部から採取した。葉は乾燥・破砕後に、ゲルマニウム半導体検出器を用いてCs-137濃度を測定した。測定後の葉は硝酸と過酸化水素を用いて湿式灰化した後に各種元素をICP質量分析装置で分析した。
コシアブラ葉のCs-137濃度は、4月27日のサンプルが最も高く、特に斜面上部で高い濃度を示した。6月2日以降のサンプルではCs-137濃度は減少したが、落葉寸前の黄葉であった11月1日のサンプルでも低下は見られなかった。なお、安定同位体のCs-133濃度も同様の傾向であった。また、Csと同じアルカリ金属であるカリウムもCsと同様に4月27日のサンプルの濃度が最も高く、6月2日以降のサンプルで減少を示したが、9月8日以降のサンプルで大きく減少した。このことから、カリウムは落葉時期における樹体内への引き戻しがあったのに対して、Csの引き戻しはなかったと推察される。


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