| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-119  (Poster presentation)

台風時の立木曲げモーメントの変化と倒伏プロセス
Variation of bending moment of standing trees and the uprooting process during typhoon

*南光一樹(森林総合研究所), 上村佳奈(信州大学), 松本麻子(森林総合研究所), 上野真義(森林総合研究所)
*Kazuki NANKO(FFPRI), Kana KAMIMURA(Shinshu Univ.), Asako MATSUMOTO(FFPRI), Saneyoshi UENO(FFPRI)

日本は台風の常襲国であり、特に大型台風の上陸、接近による強風によって森林内の立木は大規模に破壊されてきた。しかし、何故風によって立木が倒伏または破損するのか、その直接的なメカニズムは解明されていない。また木材生産や森林管理においては、無被害木であっても、表面上に見えていないダメージを知る必要がある。本研究は、樹木の揺れ方の違いを検証するために、茨城県かすみがうら市にある、樹木間隔が約1.8mのスギ(Cryptomeria japonica)人工林(樹齢14年)において、抜き切りをして樹木間隔を約2.5mに広げた抜き切り区と、そのままにした無処理区を設定した。各区のスギの根元に設置したひずみゲージのデータを用いて、根元にかかる曲げモーメントを計算した。抜き切り翌年の2018年9月、和歌山付近に上陸した大型の台風24号によって、抜き切り区でのみスギが倒伏した(Kamimura et al. 2022, Sci. Adv. 8: eabm7891)。倒伏しなかったスギ16本(無処理区11本、抜き切り区5本)のうち、13本(無処理区9本、抜き切り区4本)で、台風前後で根元にかかる曲げモーメントが8割以下に減少し、台風通過後にスギ根元に力がかかりにくくなった。この要因として、強風による枝葉の一部の落下が自重を減少させて根元にかかる荷重が減少したこと、強風による揺れにより一部の根系が破断されて根張りが悪くなり、根元で受けていた風荷重が土壌中へ逃げるようになったことが考えられた。強風によって倒伏しなかった樹木にかかったダメージを揺れデータから可視化できた。


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