| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-123  (Poster presentation)

着生シダの葉・根形質と生育環境との関係【B】
The relationships between leaf/root traits and habitat environments of epiphytic ferns【B】

*瀨戸美文(高知大・院), 比嘉基紀(高知大・理工)
*Mifumi SETO(Kochi Univ.), Motoki HIGA(Fac. Sci. Tech., Kochi Univ.)

 植物種の分布を規定する気候要因の解明は,気候変動の影響を評価・予測するうえで重要である.植物の分布と気候環境との関係の解明には,機能形質や機能形質スペクトルを考慮することが有効である.樹・岩上に固着生活する着生植物は,とりわけ気候環境の変化に敏感な種群であり,分布と気候環境との関係の解明が求められる.しかし採取の難しい着生植物では,機能形質を考慮した分布と気候環境との関係の検討はおろか,機能形質の定量化,主な機能形質スペクトルの解明すら十分でない.本研究の目的は,日本に生育する着生植物の主種群であるシダ植物(以下,着生シダ)の機能形質を定量化し,主な機能形質スペクトルと,機能形質と生育地の光・水分環境との関係を解明することである.日本に広く分布する29種の樹木着生シダを収集し,葉形質(比葉面積,葉乾物含量,葉面積,葉厚,含水量)と根密度を測定した.主な機能形質スペクトルを明らかにするため,葉・根形質を用いて主成分分析を行った.機能形質と生育地の光・水分環境との関係は,図鑑から収集した生育地の光・水分環境情報を応答変数に,主成分分析で得られたPC1・PC2軸を説明変数に当てはめた多項ロジット回帰モデルにより解析した.主成分分析の結果,PC1軸(寄与率59.7%)における因子負荷量は,葉含水量(+),葉厚(+),比葉面積(-)で高く,PC2軸(寄与率22.8%)における因子負荷量は,LA(+)で高かった.このことから着生シダの機能形質スペクトルは主に葉形質(比葉面積・含水量と葉面積の大小)で特徴づけられることが明らかとなった.機能形質と生育場所の光・水分環境との関係を解析した結果,水分環境とPC1軸との間に有意な関係が認められ,比葉面積が低く含水量の多い厚い葉をもつ種は,乾燥した場所にも生育できることが明らかとなった.


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