| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-125  (Poster presentation)

光学法による幹木部および葉のエンボリズムに対する脆弱性の評価
Optical measurement of vulnerability to xylem embolism in stems and leaves

*小笠真由美(森林総研関西), 安田泰輔(山梨県富士山研), 石田厚(京大・生態研)
*Mayumi Y. OGASA(Kansai, FFPRI), Yasuda TAISUKE(Mount Fuji Research Institute), Atsushi ISHIDA(Kyoto Univ.)

樹木のエンボリズムに対する脆弱性は、各樹種の乾燥抵抗性を表す重要な指標の1つである。エンボリズムを定量化する際、各樹種の最大道管長以上の長さの試料を採取することが望ましいが、小型な実生苗や最大道管長の長い樹種にはこの採取デザインを適用することが困難であった。その解決策として、本研究では、インターバル撮影した葉および木部の光学画像を差分解析することで葉脈や通水組織で生じたキャビテーションを検出し(光学法)、エンボリズムを非破壊的に定量化することを試みた。
スギ苗の木部およびアラカシ苗の葉にカメラを取り付け、苗の乾燥の進行過程で光学画像をインターバル撮影した。これと同時に、サイクロメーターで苗の水ポテンシャルを測定した。取得した光学画像は、連続する2枚間で差分解析をし、差分が検出された領域をキャビテーション発生領域としエンボリズム面積を求めた。エンボリズムに対する脆弱性を評価するため、水ポテンシャルとエンボリズム面積の関係を解析し、従来のエンボリズム測定法の結果と比較することで、光学法によるエンボリズムに対する脆弱性評価の有効性を検討した。
その結果、スギの木部では水ポテンシャルの低下とともにエンボリズム面積が増加し、この増加パターンは従来の測定法による水分通導度の損失率の増加パターンを概ね一致した。アラカシの葉では、水ポテンシャルが-3MPaを下回るとエンボリズム面積が増加し始めたのに対し、従来の測定法は-3MPaに達する前にほぼ葉の水分通導度が失われ、両者の結果は一致しなかった。この原因は、光学法はキャビテーションのみを捉えているのに対し、従来の測定法はキャビテーションに先行して生じる葉脈の潰れの影響も含めて水分通導度の低下として測定していることにあると考えられた。光学法は、エンボリズムに対する脆弱性を評価するという目的の上で適用できることが明らかとなった。


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