| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-130 (Poster presentation)
温帯地域では樹木の展葉フェノロジーは個体の生産性に直結するため、その種間差や環境に応じた種内変異のパターンを明らかにすることは重要である。これまで様々なフェノロジー研究において、簡易的に調べることができる開芽(bud break, bud burst)や展葉開始(leaf out, leaf unfolding)に着目して調べられてきた。しかし、樹木の生産性への影響としては、開芽・展葉開始時期だけでなく、展葉過程や葉の成熟時期も重要である。とくに展葉中には遅霜、被食などの様々な被害を受けやすいため、展葉過程における葉の形質の変化様式は樹木にとって重要な意味を持つ。本研究では、愛知県豊田市の暖温帯二次林に共存する常緑広葉樹4種と落葉広葉樹3種を対象として、展葉中に定期的に葉を刈り取って常緑樹と落葉樹における陽葉と陰葉の展葉過程を比較した。
この結果、展葉パターンについては面積の変化に着目すると陽葉と陰葉であまり差がなかったものの、葉重としては展葉とともに陽葉のほうが陰葉よりも大きくなる傾向が見られた。LMA(葉重/面積比)は常緑樹では展葉初期に減少し、その後やや増加してほぼ一定になる種が多く、陽葉と陰葉の差は徐々に開いていく傾向が見られたのに対し、落葉樹の陰葉では展葉期間を通してほぼ一定であり、陽葉では時間とともに徐々に大きくなる傾向が見られた。窒素濃度は展葉初期に急激に減少し、定常に達する種が多く、どの種も陽葉と陰葉の差が小さかった。縮合タンニンと総フェノール含量(%)には種間差が大きかったが、どちらも陽葉のほうが陰葉よりも多かった。また、常緑樹では展葉初期にフェノール量が多い傾向が見られた。以上の結果から、落葉樹と常緑樹での陽葉と陰葉の展葉パターンの差について考察をおこなう。