| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-139  (Poster presentation)

ナラ枯れの発生した横須賀市内のマテバシイ林の構造と更新
Structure and regeneration of a Lithocarpus edulis stand damaged by oak wilt disease in Yokosuka

*伊東宏樹(森林総研北海道), 衣浦晴生(森林総研)
*Hiroki ITO(Hokkaido Res. Ctr., FFPRI), Haruo KINUURA(FFPRI)

ブナ科樹木萎凋病による樹木集団枯損(ナラ枯れ)の被害が関東地方でも拡大している。同時に、コナラ・ミズナラなどのナラ林のみならず、マテバシイ林でも被害林分が発生している。今回、横須賀市内のマテバシイ被害林分において林分構造と更新状況を調べた。「ナラ枯れ」による枯損幹のある部分(被害区)とない部分(無被害区)のそれぞれに20m×20mの方形区を設定し、毎木調査を実施した。その結果、被害区(「ナラ枯れ」被害幹を含む)における幹数は97本/400m2、胸高断面積合計は52.1m2/ha、無被害区における幹数は166本/400m2、胸高断面積合計は53.7m2/haだった。両区ともマテバシイが優占割合が高く、幹数に占める割合は被害区・無被害区でそれぞれ81%および71%、胸高断面積合計に占める割合はそれぞれ67%および57%だった。また、被害区におけるマテバシイ枯損幹が胸高断面積合計に占める割合は、全樹種の合計に対して21%、マテバシイ全体に対しては31%だった。

マテバシイには、萌芽による小径幹が多く、主幹が「ナラ枯れ」により枯死しても萌芽幹は生存している場合が多かった。被害区においては林冠ギャップでアカメガシワやカラスザンショウなどの先駆樹種の稚樹が見られたが、マテバシイ萌芽幹がこのまま成長すれば、マテバシイの萌芽により更新する可能性が高いと予想された。無被害区ではスダジイの小径木(萌芽幹含む)も比較的多く、マテバシイが枯死した場合には一部でスダジイが更新する可能性もあると考えられた。

本研究は、生研支援センターイノベーション創出強化研究推進事業「With/Postナラ枯れ時代の広葉樹林管理戦略の構築」(課題番号:04021C2)により実施した。


日本生態学会