| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-140  (Poster presentation)

暖温帯二次林における皆伐後の萌芽能力に幹のサイズと樹齢が及ぼす影響
Effects of stem size and age on sprouting ability after clearcutting of a warm temperate secondary forest

松仁天志郎, 内海泰弘, *榎木勉(九州大学)
Tenshiro MATSUNI, Yasuhiro UTSUMI, *Tsutomu ENOKI(Kyushu University)

暖温帯広葉樹二次林に設定した試験地において皆伐を実施し,切株のサイズと樹齢および切株から発生する萌芽枝を計測することで,萌芽枝の発生ならびにその動態におよぼす切株の樹齢とサイズの影響を明らかにした。また,これらの結果の樹種や生活型による違いを検討し,暖温帯広葉樹二次林の種組成や林分構造におよぼす萌芽特性の影響を評価した。
 皆伐前に10m×10mの調査プロットを30個設置し,プロット内の胸高周囲長15cm以上の個体について,胸高周囲長,樹高,樹種,個体位置を記録した。皆伐の1年後と5年後にすべての切株を対象に発生した萌芽枝の数(萌芽枝数)と株内で最も高い萌芽枝の地面からの高さ(萌芽枝高)を測定した。調査区に20幹以上生育していた11種を解析対象にした。
 萌芽枝高と枝高成長は成木の最大樹高が大きな種ほど大きな値を示した。ほとんどの種が幹サイズまたは樹齢の増加にともない萌芽枝発生数が減少した。特に下層種の萌芽発生数は幹の齢が負の影響を与えていた。コナラ,アラカシ,ヤマモモには幹のサイズの増加にともなう萌芽枝高の増加が見られた。一方で,これらの種は幹の齢の増加にともない萌芽枝高が減少した。各樹種の萌芽特性と皆伐前の林分構造を因子にした主成分分析の結果,第一主成分が成木の優占度に関連する因子を説明し,第二主成分が初期萌芽能力と萌芽枝発生数の幹齢依存性とのトレードオフを示唆した。成木の最大樹高が大きな種は肥大成長速度も大きく優占度も大きかった。このような樹種はサイズおよび成長速度の大きな萌芽枝を生産する傾向があった。また,成木の優占度と萌芽発生数の幹齢への依存性との相関は高く,幹の齢が大きくなっても数多く萌芽枝を発生する種は優占度が大きくなった。一方で,萌芽発生率や株の生存率の高さなどの優占度との関係は小さかった。


日本生態学会