| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-144  (Poster presentation)

ソーシャルメディアの「いいね」獲得数を用いた国立公園の間接利用の評価【B】
Evaluation of indirect use of national parks using the number of "likes" obtained for social media posts【B】

*Rei SHIBATA(Niigata Univ.), Michio OGURO(FFPRI)

国立公園の豊かな生態系は人々の訪問により直接利用されることに加えて、ソーシャルメディアに投稿された写真などを見ることにより、実際には訪問していない人々によっても間接利用されている。特に、保護レベルの高いエリアはアクセスが困難な場合が多く訪問による直接利用は制限されるが、その手付かずの自然景観はソーシャルメディアを通じて多くの人々に間接利用されている可能性がある。ソーシャルメディアを通じた間接利用により好意や共感、感動といったポジティブな影響を受けた人々の多くは、その投稿に対して「いいね」することで気持ちを表明する。そのため、ソーシャルメディア投稿の「いいね」獲得数は、間接利用によりポジティブな影響を受けた人々の指標と捉えることができる。本研究はソーシャルメディアに投稿された位置情報付きの写真の「いいね」獲得数を、その場所の間接利用の指標とすることで、国立公園の保護レベルの高いエリアは間接利用が多い(つまり「いいね」獲得数が多い)という仮説を検証した。

2018-2022年にTwitterに投稿された位置情報付きの写真を解析対象とした。国立公園内の投稿は、地種区分に応じて3段階の保護レベルに区分した。国立公園との比較対象として、都市公園と東京ディズニーリゾートに位置情報がある写真を解析対象に加えた。解析は同一のユーザーが国立公園・都市公園・東京ディズニーリゾートそれぞれの内と外に位置情報がある写真を投稿した場合の「いいね」獲得数の期待値の変化率を階層ベイズモデルにより推定した。

国立公園の最も保護レベルの高いエリアの写真は、国立公園外の写真と比較して「いいね」獲得数の期待値は1.2倍に増加していた。この増加率は東京ディズニーリゾートの1.1倍よりも大きかった。都市公園の場合は、「いいね」獲得数の期待値は0.9倍に減少した。以上のとおり、国立公園の保護レベルの高いエリアは間接利用が多いという仮説を支持する結果となった。


日本生態学会