| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-146 (Poster presentation)
河川域の植生図は、「河川水辺の国勢調査」(国土交通省が実施)で5年に1度作成されている。しかし、植生変化の要因分析は十分に進んでいない。これは、植生図の作成間隔の間に、植生変化に影響を与える要因が複雑に重なり、植生変化との対応関係を捉えることが困難になっているためである。
本研究では、千曲川の約18km区間(46km~64km)について、2014年から2021年までの各年の植生図を作成し、8年間の変化と河川物理環境(最大水深、比高、冠水頻度)との対応関係を分析した。植生図は、高解像度衛星画像、レーザー航空測量データ(2014年と2020年の標高と植生高)、衛星画像の目視判別に基づく植生分類(水面、裸地、草地、樹林)に勾配ブースティングを適用して作成した。この8年分の植生図を20m×20mの格子(12822格子)に変換して解析した。
8年間の各植生区分の平均格子数±標準偏差は、水面5335±365、裸地1829±656、草地3210±857、樹林2247±364であり、裸地及び草地の年変動が大きかった。
2014年から8年の間に、陸域(裸地、草地、樹林)の83%の格子で植生分類が変化した(対2014年比)。植生区分別に見ると、裸地、草地、樹林であった格子は、93%、88%、66%(対2014年比)で他の植生区分に変化した。
2014年に「樹林」であった地点のうち、その後の8年間「樹林」のままであった地点は、他の植生タイプに変化した地点に比べ、最大水深が有意に小さかった。一方、2014年に「草地」であった地点のうち、2015年以降に「草地」から「樹林」に変化した地点は、8年間「草地」のままであった地点に比べ、最大水深が有意に大きくなっていた。
これらのことから、対象区間における「樹林」の増減は、主に最大水深が大きい(比高が小さい)地点で発生していることが明らかとなった。