| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-150 (Poster presentation)
モウソウチク林の管理放棄による拡大が著しいが,イノシシ生息域においてはイノシシの摂食による影響も大きい.そこで,イノシシの生息域における竹林の新稈数,枯死稈数,およびイノシシのタケノコ食害の状況を明らかにすることを目的とし,モニタリング調査を行った. また,プロット内に侵入した動物を自動撮影装置で記録を行った.
調査対象地は兵庫県淡路市に位置する県立公園内のモウソウチク林とした.淡路市は市面積の約7.5%となっており,竹林の面積割合が高い.2017年3月に長さ約80mの北東向き斜面上の斜面上部,中部,下部に10m×10mの方形区を設定した.さらに各方形区において,等高線に沿った左右両側から2.5mの位置の縦(斜面)方向に10m,等高線に沿った横(斜面に直角)方向に5mの範囲に,イノシシの侵入を防止するための高さ1mの防護柵(5m×10m)を設置し,防護柵内をイノシシの影響の無いサブプロット,防護柵外をイノシシの影響を受けるサブプロットとした.また,防護柵設置時の2017年3月および2017年から2022年まで各年の新稈の成長が終了した時点での新稈数,枯死稈数をカウントした.
イノシシ防護柵内のイノシシの影響の無いサブプロットにおける2017年3月時点の竹稈数は39±7.6/100m2(平均±SD)であった.2017年12月の52±2/100m2から2022年12月の117±14/100m2まで増加した.6年間の新稈数は89本/100 m2で,1年間あたり平均で14.9本±5.5/100m2であった.一方,イノシシ防護柵外のイノシシの影響のあるサブプロットにおける6年間の新稈数は18本/100 m2で,1年間あたり平均で3.0本±3.1/100m2であった.前年の竹稈数に対する新稈数を再生率とすると防護柵内では24.4%であり,防護柵設置前はイノシシに被食され39本/100m2に竹稈数が抑えられたいたのに対し,防護柵設置により117本まで増加したものと考えられた.