| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-152  (Poster presentation)

佐渡島の魚食シマヘビが担う物質循環機能
Material Circulations of Fish-eating Striped Snake on Sado Island

*渡部侑果(新潟大・自), 澤田聖人(筑波大・理工), 小林幸平(新潟大・農), 長谷川雅美(東邦大・理・生物), 飯田碧(新潟大・佐渡センター), 阿部晴恵(新潟大・佐渡センター)
*Yuka WATANABE(Sci. Tech. Niigata Univ.), Kiyoto SAWADA(Sci. Tech.Tsukuba Univ.), Kohei KOBAYASHI(Agr. Niigata Univ.), Masami HASEGAWA(Sci. Biology. Toho Univ.), Midori IIDA(SICES, Niigata Univ.), Harue ABE(SICES, Niigata Univ.)

捕食-被食の相互作用は物質循環の一部を担うため、食性を把握することは、対象とする動物の生態的ニッチ及び物質循環における位置づけを把握するために重要である。本研究の対象であるシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)は、カエル類を中心に利用するが、餌資源の状況に応じて生態的ニッチを柔軟に変化させると考えられている。日本海の佐渡島では、魚類であるハゼ類を利用するシマヘビ個体群が、北西部の外海府地域を中心に確認されており(伊藤ら ESJ66ポスター発表)、本種は、両側回遊を行うハゼ類を捕食することで、水域から陸域へと物質を引き上げる、森・川の物質循環を繋ぐベクターとして機能していることが予想される。そこで本研究では、新潟県佐渡島及び十日町市にて、シマヘビの捕獲調査を4〜10月に行い、胃内容物から食性を把握した。また捕獲したシマヘビ、及びカエル類等の餌生物から、組織の一部を用いて安定同位体分析を行い、混合モデルよりカエル類・トカゲ類・ウキゴリ属魚類・ヨシノボリ属魚類の4グループごとの餌利用割合の推定を行った。佐渡島の外海府地域の胃内容物(計52例)からは、6、7月にハゼ類が半数以上を占め(6月:77%、7月:80%)、他の月よりも高い利用割合が示された。安定同位体比分析では、ハゼ類の各月の推定利用割合は15%以下で10月に多く、餌生物の利用割合、魚食を行う季節ともに胃内容物解析の結果と乖離がみられた。安定同位体比分析では、ターンオーバー期間により、実際の食性との間にズレが生じることがあるため、本研究でシマヘビが魚食を行っていたのは6、7月と推測できる。この時期は、ハゼ類のオスが河床の産卵床で卵の保護行動を行っており、容易に捕食できる。このため餌としての利用が増加したと考える。以上より、シマヘビは初夏の時期にハゼ類を利用することにより、ベクターとして機能していると結論づける。


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