| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-162 (Poster presentation)
福島県内の一部地域では、淡水生態系と淡水魚の放射性セシウム汚染が継続している。淡水魚の放射性セシウム濃度の予測と管理のために、河川と湖沼を含む様々な淡水生態系における放射性セシウムの動態を明らかにすることが必要である。そのため、本研究では炭素と窒素の安定同位体比分析により、栄養段階間の相互作用における放射性セシウム動態(生物濃縮または希釈)と、食物網への放射性セシウム供給源としての生産者の相対的な重要性を評価した。放射性セシウムの栄養段階間の移行については、河川食物網では生物希釈の傾向があり、湖沼食物網では魚群集内での顕著な生物濃縮の傾向があった。また、魚に対する生産者の寄与率を計算した結果、魚類の放射性セシウム濃度は、河川ではリターより付着藻類に依存した魚類で、湖沼ではベントスよりプランクトンに依存する魚類で比較的高かった。本研究の結果は、魚へ移行する放射性セシウムの食物網における重要な供給源は河川や湖沼のような生態系によって異なることを明らかにし、生態系によって異なる移行経路を考慮した淡水魚への放射性セシウム移行の予測と管理の重要性を示した。