| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-163  (Poster presentation)

微小透析法を用いた土壌の窒素可給性の評価:従来手法との比較の試み【B】【E】
Evaluation of Soil Nitrogen Availability Using Microdialysis Method: An Attempt to Compare with Conventional Methods【B】【E】

*小山里奈(京都大学)
*Lina A. KOYAMA(Kyoto Univ.)

微小透析法は、土壌に挿入したプローブにポンプで潅流液を流し込み、周囲の物質が拡散によりプローブの半透膜を通じて液に移動することを利用して、土壌中の物質を採取する手法である。土壌の撹乱が小さく、細根による吸収を模した試料採取が可能な手法と言える。しかし、本手法で評価した土壌の窒素可給性と、従来手法で得られた窒素可給性との関係には不明点が多い。本研究では、土壌の2M KCl抽出(抽出液)、吸引ライシメーターで採取された土壌溶液(土壌溶液)と、微小透析法で得られた試料(透析試料)中の無機態窒素濃度を比較し、本手法で得られる窒素可給性の評価を試みた。森林土壌(京都大学芦生研究林で採取)と川砂(市販・園芸用)の2種類の土壌に硝酸態・アンモニア態窒素をそれぞれ0、1、2 mg/Lの3段階の濃度で含む溶液を添加して水分を飽和状態にした6種類の材料を準備した。それぞれの土壌から、透析試料、土壌溶液、抽出液を採取し、硝酸態・アンモニア態窒素濃度を測定した。手法にかかわらず川砂の窒素可給性は森林土壌に比較して低かった。単位膜面積・時間あたりの窒素通過量で表した透析試料の硝酸態窒素可給性は、土壌に添加した硝酸態窒素濃度と有意な相関を示したが、アンモニア態窒素は相関が弱かった。土壌溶液の無機態窒素濃度は、川砂では添加された無機態窒素濃度と有意な相関を示したが、森林土壌では相関が弱かった。抽出液はいずれの土壌においても、添加した無機態窒素濃度と有意な相関を示さなかった。川砂では、透析試料と土壌溶液の硝酸態窒素は高い相関を示したが、アンモニア態窒素ではこの相関は低く、森林土壌では、透析試料は土壌溶液・抽出液のいずれとも有意な相関を示さなかった。透析試料は土壌水分条件の影響を受けることが知られているが、土壌タイプにより異なる結果が示されたことから有機物含量やpHなどその他の土壌特性の影響についても検討の必要があることが示された。


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