| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-164 (Poster presentation)
遷移後期段階にある非管理の森林、いわゆる老齢林は重要な炭素吸収源とされる。これまでの多くの野外調査研究から、老齢林キャノピーの複雑な構造特性が森林の総生産量(GPP)に強く影響を及ぼすと指摘されてきたが、そのメカニズムにはいまだに未解明な部分が存在する。そこで発表者は、大気ー植生動態モデル(MINoSGI, Multi-layered Integrated Numerical Model of Surface Physics-Growing Plants Interacton)を用いて北方林、温帯林、熱帯林バイオームを対象に森林の発達段階の違いで生じる森林の構造複雑性とGPPとの関係について調べた。ここでは300年間の長期シミュレーションを実施し、計算初期条件には複数のサイズ構造シナリオを設けた。シミュレーションの結果、複雑なキャノピー構造を示すサイズ構造と単純な構造を示すサイズ構造を持つ森林のGPPの差は大きく、一方で構造変化に違いが見られなくなった場合の森林での比較からGPPの差は小さくなった。この差はそれぞれ年間GPPのおよそ13%, 8%に相当することがわかった。さらに群落内の陽葉および陰葉で得られた光合成量および光環境との関係を調べた結果、陰葉によるGPPが全体の7割程度を占め過去の研究結果で示された結果と同程度となること、また陰葉によりトラップされた拡散光と高い相関があることなどがわかった。これより、GPPは多層構造の複雑性が高くなるほど増加し、これは陰葉の林内拡散光利用と関連しており光利用効率を高めた結果であると示唆された。