| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-169 (Poster presentation)
気候変動に対する生態系の耐性は樹木の多様性によって高められるか、という議論が近年活発に行われている。本概念は短期的な実験研究によって検証されているものの、自然生態系での長期的な気候変動下(数十年間にわたる慢性的な変化)におけるそのメカニズムについては議論が進んでいない。本研究では、カナダ西部の乾燥地バイオームにおける自然林の長期観測網データを用いて、気候変動に対する地上部のバイオマス成長量(炭素吸収機能の代替)の応答が機能的多様性(ニッチ相補性の代替)や機能的冗長性(ポートフォリオ仮説の代替)によってどう異なるか、ということを調べた。
その結果、機能的に多様な森林ではバイオマスの成長量は暦年とともに増加し、多様性の低い森林では変化しなかったという傾向が示された。続く解析では、二酸化炭素の濃度上昇による成長促進量も、機能的に多様な森林でより大きかったことが示された。一方、機能的に冗長な森林では機能的冗長性の低い森林よりも、気候の長期的な乾燥化による悪影響(成長量の減少)が軽減されていたことがわかった。本研究により、長期気候変動を経験する乾燥地バイオームにおける生態系機能の持続性を高めるうえで、機能的多様性と冗長性の両方を維持・促進することの重要性が示唆された。