| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-178 (Poster presentation)
自然群集における多様性‐安定性関係を明らかにすることは、現在の生態学における重要な課題の一つである。これまで、自然群集における多様性‐安定性関係の解明は特定の機能群に着目して検証されてきたが、このような機能群は栄養段階や生息場所などいくつかの階層構造をもつ。ところが、着目する階層の違いによって多様性‐安定性関係がどのように変化するのかについてはまだよくわかっていない。そこで本研究では、岩礁潮間帯固着生物群集を対象に、栄養段階の異なる藻類群集と固着動物群集のそれぞれの多様性‐安定性関係と両者を合わせた固着生物全体の多様性‐安定性関係を明らかにした。
その結果、藻類群集と固着動物群集では、種数は群集の安定性を直接増加させるだけでなく、個体群動態の安定性の増加を介した安定化が生じており、同調性を介した安定化は顕著ではないことが明らかとなった。一方で、固着生物群集全体では、種数が群集の安定性に及ぼす影響は変わらないものの、同調性の低下に伴う安定化が顕著であった。このことは、機能群の階層ごとに自然群集における多様性安定性関係を確かめる重要性を示唆している。