| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-201 (Poster presentation)
南米原産のアルゼンチンアリLinepithema humileは1800年代後半から世界各地へ逸出し、侵入地では莫大に数を増加させて在来生物に負の影響を与えることから、世界の侵略的外来種ワースト100に登録されている。日本では1993年に初めて定着が確認された後、2005年に特定外来生物に指定され防除対象となっているものの、現在までに13都府県で定着が報告されている。特に2012年以降は、兵庫県伊丹市(以下、伊丹)、同県神戸市垂水区(以下、垂水)、大阪府大阪市(以下、大阪)、同府堺市(以下、堺)、奈良県奈良市(以下、奈良)、同県大和郡山市(以下、大和郡山)、と近畿圏での発見報告が増加している。本研究では、近畿圏で2012年以降に発見されたアルゼンチンアリのミトコンドリアDNAのCOI、COIIおよびcytochrome-b遺伝子を分析することで、それら個体群の侵入起源を推定した。その結果、対象とした個体群はいずれも日本に既存のハプロタイプを有することが明らかとなった。具体的には、伊丹(n=22)や堺(n=14)、奈良(n=9)、大和郡山(n=3)の個体群はハプロタイプLH2のみを有し、垂水(n=12)および大阪(n=23)の個体群はそれぞれハプロタイプLH2とLH3を有する2つの個体群によって構成されることが判明した。LH2がこれまで日本でのみ確認されていること、LH3の侵入地域も日本を除きアメリカ大陸の6地域のみであることを踏まえると、本研究で対象とした個体群はいずれも国内移送により侵入した可能性が高いと考えられた。本発表では、これまでにアルゼンチンアリが発見された地域間における物流データも参照し、アルゼンチンアリの国内移送プロセスについて議論する。