| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-202 (Poster presentation)
特定外来生物アカボシゴマダラは、長野県では2014年に初めて軽井沢町で成虫が確認され、以後同地では毎年継続して確認されるようになった。長野県北東部での広域の分布状況を把握するため、2020年に34か所の小高い山頂部で本種の観察と捕獲を行った。その結果、須坂市、長野市、千曲市、坂城町、上田市、東御市、小諸市、佐久市、軽井沢町の計26か所で生息が確認され、捕獲個体は春型雄16個体、夏型雄164個体、夏型雌2個体の計182個体であった。その後、成虫の確認場所は2022年までに飯山市まで広がった。幼虫も域内の複数地点で確認され、越冬後羽化に至った事例もあった。成虫の翅の状態は羽化後の経過時間を示す指標とも考えられるため、2020年の捕獲個体の翅の状態を調べたところ、翅の欠損がないものが40.1%、欠損があるものが59.9%であった。欠損の多くは鳥類などの捕食者によるビークマークと考えられ、欠損がある個体の内はっきりとしたビークマークと判断された個体の割合(ビークマーク率)は43.4%であった。この割合は国内の他種の事例に比べてかなり高い。以上の結果から、アカボシゴマダラは長野県北東部で少なくとも春以降に世代交代により増殖し、近年急速に分布を拡大したこと、また一部は越冬・羽化していることが明らかとなった。山頂部で占有行動をとる雄に注目した定点観察は本種のモニタリングに有効である。また本種で翅に欠損のない個体は捕獲地点の近隣で羽化した可能性が高いと考えられる。