| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-205 (Poster presentation)
外来生物は時に侵入先で好適な環境にたどり着き、急速に個体数を増加させ、
分布を拡大させることがある。侵入、定着をしてしまった外来生物を駆除する ことは非常に困難である。しかし、侵入後、分布拡大を抑制することにより悪 影響を減らすことが可能な場合がある。外来生物の分布拡大を抑制するために は、そのメカニズムを明らかにすることが重要であるとされている。これまで に外来生物のメカニズムに関する研究は数多くなされてきた、しかし、その研 究の多くはマクロなスケールで行われており、生態特性に関する詳細な知見を 得ることができるミクロなスケールを対象としている研究は少ない。そこで本 研究では、餌資源が乏しいとされる市街地を中心に現在分布を拡大中であるヨ ツモンカメノコハムシを対象に、ミクロなスケールにおいて市街地における分 布拡大メカニズムを明らかにすることを目的とし、2 つの調査地においてルー トセンサスを行うと共に、本種が持つとされる市街地における餌資源の不安定 性に対応できる生態特性である飢餓耐性能力を調べる飢餓耐性実験を行った。 その結果、本種は人や荷物に随伴することにより、市街地に侵入したのち、市 街地において散発的に発生するヒルガオ属植物を利用できる飢餓耐性を持つこ とで、分布拡大に成功している可能性が示唆された。今回のケースのように人 によって、都市域に運び込まれ、散発的な餌資源を利用できる生態特性によって分布拡大に成功するように、都市域という本来、分布を拡大する際に障害に なる空間を利用し、分布拡大するといったことは今後も起こりうるかもしれな い。そのため、ミクロなスケールにおける外来生物の観測による、生態メカニ ズムの知見を積み重ねることは重要であり、これからも続けていく必要がある。