| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-210 (Poster presentation)
特定外来生物アライグマは2006年度から2017年度までに分布域を約3倍に拡大した。分布定着した各地で農業被害、人的被害や在来生物への影響が急激に増加し、その対策が求められている。これまでに、農業被害の軽減を目的とした対策が主に進められてきた一方で、在来生物の保全を目的としたアライグマ防除はほとんど進められていない。保全を目的とした効率的なアライグマの防除のためには、捕食される餌生物の特定や、その餌生物の繁殖期などの季節消長と捕食リスクの関係を明らかにする必要がある。そこで本研究では、先行研究で捕食事例があり、アライグマの春先の重要な餌資源であるカエル類に注目し、局所的なカエル密度とアライグマの採食頻度の関係性を自動撮影カメラを用いて明らかにした。調査地は兵庫県神戸市にあるあいな里山公園内でニホンアカガエル(以下、アカガエル)の繁殖期である2020年1月から3月に実施した。予備調査で卵塊数が異なっていた18の湿地とため池に、各3台ずつの自動撮影カメラを設置した。アカガエルの繁殖期が終わったと思われた3月初旬に調査サイトを含めた158か所で卵塊数のカウントを行った。158か所の合計卵塊数は1380個であり、カメラを設置した18サイトでは平均47.6個(最小‐最大、0-316)となった。カメラ調査では18サイトすべてでアライグマが撮影され、総撮影回数は約3000回と他の哺乳類・鳥類を含めて最も多く撮影された。撮影回数はサイトごとに異なり、最小で2回、最大で538回となった。アライグマの撮影回数がアカガエルの密度と正の相関があるかを、撮影回数を目的変数、アカガエルの卵塊密度を説明変数とした一般化線形モデルにより解析した。その結果、卵塊密度は正の効果があり、アカガエルの卵塊数が多いサイトほど、アライグマの撮影回数が多かった。