| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-212 (Poster presentation)
ヌートリア(Myocastor coypus)は、水辺に生息する大型の外来齧歯類で、2022年時点では、静岡県以西の本州と、香川県の一部の島に定着している。
大阪府では、2000年に淀川本流で初めて記録された。2004年までは淀川本流とその周辺のみに分布していたが、その後、2009年までには淀川の支流と猪名川水系に分布を拡大。大阪府北部(大和川より北)の大阪平野と丘陵部、及び山間地の能勢町・豊野町に広く分布するようになった。2014年頃から大和川水系で観察されるようになり、2019年までには大阪府内の大和川水系の支流に拡がった。さらに2021年〜2022年には、堺市(石津川水系)や岸和田市(春木川)といった大和川水系より南でも確認されており、大阪府での分布はどんどん南下している。
奈良県では、2010年代にはすでに北部の木津川水系(淀川の上流部にあたる)で確認されていた。しかし、奈良盆地(大和川水系の上流部)への侵入は遅れ、2019年1月に初めて記録された。その後、急速に分布を拡大し、2022年時点では奈良盆地で広く記録されるようになっている。
大阪市立自然史博物館では、2000年以降、大阪府を中心にヌートリアの確認情報を、インターネットなどで広く市民に呼びかけて収集してきた。比較的明るい時間帯に行動することが多く、水辺で目立つヌートリアは、市民の目にふれる機会が多い。また、カピバラやビーバーに似た姿は注目されやすく、撮影されることが多い。そして、インターネットで名前を調べる人が多いため、インターネットで情報募集することによって、効果的に確認情報を集めることができる。日本には混同する種がほぼいないという点を含め、市民調査による分布の把握に極めて適した対象である。
発表では、おもに市民調査によって把握できた範囲で、大阪府と奈良盆地の分布の変遷を報告する。