| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-213  (Poster presentation)

Citizens' prioritization of invasive species management.

*Kota MAMENO(Tohoku University), Takaaki SUZUKI(Gifu University), Takahiro KUBO(NIES, University of Oxford)

外来種管理を効果的に実施するためには、住民からの支持や協力を得る必要がある。近年、効果的な外来種管理の実現を目指し、化学的防除をはじめ様々な管理手法が開発されている。しかしながら、どのような外来種の管理手法が市民から望まれているか、これまでほとんどわかっていない。そこで本研究では、対馬市におけるツマアカスズメバチの管理を事例として、どのような管理手法の適用が人々に望まれるのかについて定量的に評価する。
本研究では、マーケティング分野で開発され、近年保全科学分野でも適用されはじめているベスト・ワースト・スケーリング法(BWS)を用いたアンケート調査を対馬市の住民対象に行った。BWSにおいて比較する管理手法については、「殺虫成分の有無」、「噴霧型か置き型トラップか」を組み合わせた4つの管理手法と管理しないを含めた5つの選択肢とした。調査票はランダムに選定された住民に対し郵送で配布され、郵送にて回収された。合計320部のアンケート票が回収され(回収率24.6%)、そのうち有効回答であった236部の回答を分析に用いた。
分析の結果、現行の方法である殺虫剤の含まない置き型トラップであるペットボトルトラップが地域住民に最も支持されており、管理を行わないことが最も支持されていないことがわかった。さらに、地域住民は殺虫成分の有無に関わらず、スプレーを使用した管理手法よりも置き型トラップを使用した管理手法を望む傾向があることがわかった。また、ツマアカスズメバチの駆除を行う場所が街中であるのか、森林内であるのかによって、地域住民の各管理手法に対する選好が異なることがわかった。本研究の結果は現行の管理手法を社会科学的側面から支持する一方で、より効果的な手法への変換の際には住民への理解を促していく必要があることを示唆している。


日本生態学会