| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-217 (Poster presentation)
昨今,草原や疎林で繁殖する開放地性鳥類の減少が著しい。国内では,火入れなどの人為的攪乱により維持されている二次草原が激減し,複数の開放地性鳥類が絶滅危惧種に指定されている。開放地性鳥類の保全においては,火入れや草刈りといった草原の管理方法と鳥類の分布状況との関係を明らかにすること,鳥類の営巣場所や食物資源として重要な植生構造や節足動物相と草原管理方法との関係を解明することが求められる。しかし,繁殖活動に則した空間スケール(例:巣の周囲,なわばり)での検討が課題である。さらに,繁殖期間中の春から夏にかけて,草原環境では植生構造や節足動物相も大きく変化する可能性があり,短期的な経時変化も考慮する必要がある。
本研究では,富士北麓の火入れ草原,火入れを休止した草原,牧草地で繁殖する開放地性鳥類を対象とし,①希少種の種数や個体数が多い二次草原,②開放地性鳥類の種数及び個体数が豊富な二次草原の土地利用,植生,節足動物相における特徴を明らかにすることを目的とし,調査を実施した。2019年~2021年に火入れ2地域,火入れ休止2地域,牧草地2地域に調査区画を複数設け,5月~7月の鳥類相,植生構造(下層植生の植生被覆率など),節足動物の目別重量などを記録した。発表では,①については面積の広い火入れ草原で希少種が豊富だったこと,火入れ休止草原や牧草地において希少種が確認される地域とされない地域があることがわかった。②については,地域全体では 6月下旬の中層植生被覆率が高いほど,5月中旬の節足動物の資源量が多いほど,繁殖種数が増加する傾向がみられた。5月中旬の節足動物は繁殖地に渡来したばかりの渡り鳥や,繁殖をすでに開始している留鳥にとって食物資源として重要だったと考えられる。