| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-219 (Poster presentation)
■概要
河川環境に生息する多くの生物は、比高の差異によって生じる地表攪乱や冠水頻度の違い等の河川特有の環境要因によって生息可能性が決定される。本研究で提案する調査手法では、レーザ測量成果(LPデータ)を用いた事前の微地形解析と現場での高精度測位によって、従来手法に比べ集中的且つ効率的な調査が可能となり、調査コスト、環境への調査圧を大幅に低減することができる。
■従来の調査手法
調査対象種を漏れなく確認するため、調査範囲内に10m間隔の調査ルートを設定し、調査員が目視で確認した。本手法では調査範囲が膨大となることから、作業コスト、現地作業者の踏圧による生息環境の攪乱等の課題がある。また、現地での調査ルートの設置に際しては、その空間精度が課題となる。
■新たな調査手法
ALB(航空レーザ測深)やUAVグリーンレーザ測量によって、湿地帯や湛水域を含めた河川の精緻な三次元地形情報を得ることができる。従来手法により確認された既知の生息情報をもとに、この地形情報を用いて水辺環境の微地形解析を行い生息適地を絞り込むことで、生息適地が確認できる最低限の調査ルートを設定する。現地ではRTK-GNSSによる高精度測位によって事前に設定したルートを正確に移動する。
また、レーザ測量データは一般にデータサイズが大きく変換にも手間のかかる場合が多いが、扱い易いラスタデータへ効率的に変換する独自プログラムを開発し、これを解決する。
■結果と展望
提案手法での作業コストは従前手法の2割程度であり、大幅な省力化と調査圧の低減に成功した。また、調査対象種の確認数は従来手法による確認数と概ね同等であったことから、新手法による対象生物の発見効率は従来手法の5倍に相当すると考えられる。
本手法は、微地形により生息域が縛られる種において有効であると考えられる。