| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-225  (Poster presentation)

オガサワラシジミ生息域外保全集団における繁殖途絶の遺伝的背景
Genetic background of breeding disruption in the ex-situ conservation population of Celastrina ogasawaraensis

*中濱直之(兵庫県立大学), 上田昇平(大阪公立大学), 矢後勝也(東京大学), 矢井田友暉(神戸大学), 小長谷達郎(奈良教育大学), 平井規央(大阪公立大学), 丑丸敦史(神戸大学), 井鷺裕司(京都大学)
*Naoyuki NAKAHAMA(Univ. Hyogo), Shouhei UEDA(Osaka Metropolitan Univ.), Masaya YAGO(Univ. Tokyo), Yuki YAIDA(Kobe Univ.), Tatsuro KONAGAYA(Nara Univ. Edu.), Norio HIRAI(Osaka Metropolitan Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.), Yuji ISAGI(Kyoto Univ.)

 オガサワラシジミは小笠原諸島にのみ分布するシジミチョウ科の昆虫で、種の保存法により国内希少野生動植物種に選定されている。2018年の母島での記録を最後に野生個体が発見されておらず、2016年に開始された生息域外保全事業も20世代まで累代飼育に成功したものの、2020年に繫殖途絶したことから、現時点では生きた個体が見られなくなっている。
 本研究では、オガサワラシジミを対象に生息域外保全集団が繫殖途絶に至った遺伝的な背景の解明を目的とした。野生個体(2001-2015年収集)及び生息域外保全個体(2016-2020年収集)の合計193個体について、MIG-seq法による集団遺伝解析を実施した。
 その結果、生息域外保全集団は世代を経るごとに遺伝的多様性が減少傾向にあった。また生息域外保全集団の世代ごとの孵化率と遺伝的多様性には強い相関が認められた。これらの結果から、本種の生息域外保全集団は、遺伝的多様性の低下に伴う近交弱勢により繁殖途絶に至ったことが考えられた。さらに、野外集団の遺伝的多様性を確保するために本来導入すべきだった生息域外保全集団の創立個体数についても推定したので、その結果も併せて報告する。


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