| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-233 (Poster presentation)
草刈りや火入れなどで維持されてきた半自然草地は、管理放棄や開発などにより、近年大幅に減少している。一方で、耕作地跡などに、新しい半自然草地が形成されている。このような半自然草地は、草原生植物の代替生育地として期待される。本研究では、静岡県中西部の茶草場(茶園の敷草を刈るための半自然草地)を対象として、棚田跡地に成立した茶草場の種組成を調査した。さらに、環境条件、周辺の種子供給源および植生再生の期間が種組成にどのように影響しているか推定した。
2012年から2013年に、静岡県菊川市および島田市の、歴史の長い茶草場9カ所と棚田跡地の茶草場6カ所で調査を行った。各茶草場にコドラート(2.25m2)を2~12個設置し、植生、開空率および土壌条件を調査した。棚田跡地の茶草場への種子供給源の量は、周辺の歴史の長い茶草場までの距離と面積から評価した。植生再生の期間は、過去の空中写真をもとに、棚田が茶草場へ転用された時期を推察することで評価した。NMDSで種組成の序列化を行い、同時分布推定モデル(Joint SDM)で種組成に影響している要因を推定した。
棚田跡地の茶草場の種組成は、歴史の長い茶草場と概して異なっていた。Joint SDMを利用した解析の結果、種組成の違いは部分的に環境条件に起因することが示唆された。周辺の種子供給源と種組成の間に明確な関係性は認められなかった。植生再生の期間も、概して種組成と明確な関係性はなかった。