| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-234 (Poster presentation)
天然記念物の指定対象のうち植物を指定した物件では,指定時の状態を維持するための管理が必要とされることが多い.その維持管理には物件の所有者だけでなく,自治会のような地縁団体や地域住民により構成された組織が携わり,重要な役割を果たしている場合があると考えられる.本研究では,中国,四国,九州地方(沖縄県以外)の国指定天然記念物を対象に,地縁団体や住民組織が指定物件の維持管理をどの程度担っているか,および該当する場合の維持管理の内容を調査した.対象地域の国指定天然記念物のうち植物に関する指定物件を抽出し,それらが含まれる基礎自治体に照会して,当該天然記念物の維持管理を行なっている団体,組織等の有無と維持管理の内容に関する情報を得た.
87の基礎自治体から,104件の指定物件についての情報が得られた.これらの天然記念物を指定物件の特性に基づいて,単木,森林群落,その他の3種類に区別すると,それぞれ44件,30件,30件であった.また,指定物件の維持管理の主な担い手を,物件の所有者,地縁団体や地域住民,自治体の3種類に区別すると,それぞれ40件,36件,28件であった.単木指定の物件の半数については物件の所有者が維持管理の主な担い手であったが,これは指定物件が神社や寺院などにあることが多いためと推察された.一方,全体の3分の1を超える指定物件の管理に地縁団体や地域住民が関わっており担い手としての重要性が示唆された.地縁団体や地域住民による維持管理の内容は下刈りおよび除草が最も多く,単木指定の物件では樹木の周囲や現地に至る経路,草本群落等では物件や指定地自体の植生管理を担っていることが明らかになった.