| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-242 (Poster presentation)
気候変動は、乱獲、生息環境の破壊、外来種といった従来の脅威に加えて、世界的な生物多様性の危機を深刻化させている。そのため脱炭素のために再エネの推進は、喫緊に取り組むべき課題である。しかし日本の再エネの占める割合は約18%に過ぎない。その中でも太陽光や水力と比べ、風力は電源構成全体の1%程度と少なかったが、2017年以降に環境アセス手続きを開始した全事業の過半数を、陸上風力発電が占めており、増加傾向にある。これまで陸上風力発電の計画は、牧場跡地など人工改変地で多かったが、数年前より奥山の尾根上などでの計画が増加傾向にある。これら計画は、原生的な植生、希少鳥類の生息、土砂災害など自然環境への影響が懸念される。そこで、本研究では、環境アセスメントデータベース(EADAS)使用して、2018年以降に環境アセス手続きを行った陸上風力発電計画の立地を明らかにした。
陸上風力発電事業の計画は北海道と東北地方で特に多く、次いで九州であった。事業想定区域内に原生的な森林である植生自然度9を含む計画は約50%、自然草原である植生自然度10を含む計画は約15%を占めていた。また特定植物群落を約10%、緑の回廊を約5%、保安林を約70%、事業想定区域内に含めていた。また保安林の中でも特に土砂災害防備保安林が含めている計画が増加傾向にあった。業想定区域内に希少鳥類のイヌワシの生息地を約20%、オジロワシを約35%、クマタカを約50%、オオワシを約25%、含めて計画されていた。さらにバードストライクなどのリスクを環境省が示した鳥類センシティビティマップの中でも、最高ランクのA1やA2のメッシュを含めている計画が7%程度占めていた。
また発電事業者により自然環境への配慮状況は大きく異なっており、陸上風力発電の推進には、これら一部事業者が自然環境への配慮を行うことが重要である。