| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-243 (Poster presentation)
【目的】海洋マイクロプラスチック( MPs )とは 5mm 以下のプラスチックの総称であり、 MPs による海洋汚染は近年注目されている環境問題の 1 つである。表層の MPs 密度は同じ海域でも大きく異なり、均一ではなくパッチ状であることが知られている。一方、海産仔稚魚もまた表層近くを不均一に分布している。もしこれらの分布が一致しているならば、仔稚魚によるMPsの誤食リスクが上がり、生体への影響が増大することが予想される。そこで本研究では MPs と仔稚魚の密度関係を精査することを目的とした。
【方法】仔稚魚のサンプルは九州西方海域において、 2019 年 4 月、 6 月、 7 月、 10 月、 11 月、 2020 年 6月にそれぞれ 9 地点に渡り、ニューストンネットで採取した。仔稚魚の同定は、まず形態学的特徴に基づきソーティングした。次にサンガーシーケンスによって DNA 配列を特定し、 BLAST 検索により種の同定を行った。 MPs の密度データは、Kobayashi et al.( 2021 )のデータを利用し、仔稚魚密度との関係を探索した。
【結果】仔稚魚は計 1359 個体、 25 種が確認された。このうち個体数が多かった数種類(メジナ、カワハギ、カタクチイワシ等)では、月ごとにサンプリング地点の仔稚魚とMPs密度の関係に有意な相関はなかった(p > 0.05)。この原因として、仔稚魚ではその分布に地点により大きな偏りがあるものの、MPsは比較的海域全体に均一に分布していることが考えられた。これらの結果は、プラある処に魚はおらず、仔稚魚とMPsは異なるメカニズムによってパッチ状の分布を形成していることを示唆している。