| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-244 (Poster presentation)
野生動物の生息地利用に関する従来の評価は、カメラトラップ等を用いた短期間(単年から数年)の結果にもとづいて明らかにされてきたものも多い。短期間の研究では、必然的に、対象哺乳類が選択する資源として、植生・土地利用・地勢など「年変動しない環境要因」に着目することになる。しかし、気象条件や人為攪乱、さらには過去に生息していなかった生物種の侵入など、「年変動する環境要因」によっても、対象種の資源の配置や利用可能量の変化が起こりうる。その結果、変動する環境要因によって、直接的にも間接的にも、選択される資源(すなわち実現ニッチ)が異なる可能性があり、これは長期調査でなければ明らかにすることができない。そこで本研究では、「年変動しない環境要因」と比較する形で、「年変動する環境要因」が中・大型哺乳類の生息地利用にもたらす影響を明らかにする。筆者らは、山形県の行政事業を活用し、2014年以降の非積雪期を対象に、朝日山系に設置した8つのモニタリングサイトにおいて、1サイトあたり4台、計32台のカメラトラップを設置し、中・大型哺乳類の生息地利用を継続的に評価し続けている(2022年末現在、計53,396カメラ日)。本発表では特に、中・大型哺乳類の生息地利用の評価において、年変動する環境要因として、各種気象条件、さらには2019年以降に本格的に侵入してきたイノシシに注目し、評価対象とした哺乳類ごとにその影響量の大きさを、「年変動しない環境要因」と比較した結果を紹介する。