| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-245  (Poster presentation)

丹沢山地における流水性サンショウウオ類幼生の生息環境
Habitats of stream salamander larvae in the Tanzawa  Mountains, Japan

*貫洞亮司, 竹内寛彦(日本大学)
*Ryoji KANDO, Hirohiko TAKEUCHI(Nihon Univ.)

丹沢山地には,ヒガシヒダサンショウウオ(Hynobius fossigenus)とハコネサンショウウオ(Onychodactilus japonicus)の2種類の流水性サンショウウオが生息する.2021年から2022年にかけて行った分布調査の結果,2種とも分布域が縮小している傾向にあった.サンショウウオ類は環境の変化に弱いと言われているため,今後その生息域は減少する可能性がある.本研究はサンショウウオ類幼生の生息に適した環境要因を解明することを目的として,河川の物理的環境とその季節的な変動を調査した.河川の物理的環境の調査について,分布調査で対象とした2つの水系を選択し,約200m間隔で調査地点を設定した.調査項目は,標高,水温,水深,流水幅,平均勾配とした.物理的環境の季節的な変動についても,2022年の7月から11月にかけて,1地点あたり各月に2回の計10回にわたり,水温,流水幅,水深を測定した.河川の物理的環境の結果から,サンショウウオ類幼生が確認された地点では,確認されなかった地点と比較して標高が高く水温が低い傾向にあった.また流水幅が狭く,水深が浅い場所を選好する傾向にあり,確認された地点の平均勾配は高い傾向にあった.また,確認されなかった数地点でイワナが確認された.河川の季節的な変動の調査から,水深と水温は生息が確認された地点の方が変動幅は少ない傾向にあった.また生息が確認されなかった数地点では,渇水期に河川の水が涸れてしまった.これらの結果から,高水温が標高分布の制限となっている可能性があり,水深が浅く流水幅が狭いことで,イワナからの捕食を免れている可能性が示唆された.さらに河川の季節的な変動幅が少なく,流量が安定していることが,生息環境の重要な要素の一つであることが示唆された.


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