| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-249  (Poster presentation)

オガサワラシジミの生息域外保全集団におけるオス不妊と精子数
Male infertility and sperm number in the ex-situ conservation population of Celastrina ogasawaraensis

*小長谷達郎(奈良教育大学)
*Tatsuro KONAGAYA,(Nara Univ. Edu.)

小笠原諸島に固有の蝶であるオガサワラシジミは、1990年代までに父島から姿を消し、2019年以降は母島でも発見例がない。2016年から累代飼育されていた生息域外集団も2020年に途絶し、生存個体の見られない状態が続いている。生息域外集団においては孵化率の低下やオスの不妊が報告されていた。そこで本研究では、その原因を探索するために、オガサワラシジミの標本を解剖し、オスの貯精嚢内やメスの受精嚢内の精子数を調査した。繁殖途絶前の数世代の個体では、有精卵を産んだペアのオスの保有精子数が無精卵しか産まなかったペアのオスよりも少なかった。同じ世代のメスでは、有精卵を産んだ個体も無精卵しか産まなかった個体も、受精嚢内に精子を保持していなかった。一部のオスでは精巣の極端な小型化や輸精管の閉塞も観察された。これらの結果は当該世代において精子不足が生じていたことを意味している。一方、創設間もない頃の生息域外集団のオスは繁殖途絶時のオスよりもはるかに多い量の精子を保有していた。オガサワラシジミの生息域外集団においては、世代を経るごとにオスの生産精子数が減少した可能性が高く、精子の枯渇が繁殖途絶の直接的原因のひとつになったと考えられた。


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