| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-250  (Poster presentation)

衛星発信機データを活用した再導入コウノトリの国内における生息適地解析
Habitat suitability analysis of reintroduced Oriental Storks Ciconia boyciana in Japan using satellite tracking data

*田和康太(国立環境研究所), 山田由美(慶応義塾大学, 総合地球環境学研究所), 佐川志朗(兵庫県立大学, コウノトリの郷公園)
*Kota TAWA,(NIES), Yumi YAMADA(Keio Univ., RIHN), Shiro SAGAWA(Univ. of Hyogo, HPOWS)

 国内におけるコウノトリの繁殖個体群は1971年に野生絶滅したが,兵庫県豊岡市にて2005年9月に再導入が開始された.その後の継続的な放鳥や野外での繁殖,放鳥拠点の拡大等の複合的要因により,2023年1月31日現在,野外における再導入コウノトリの個体数は303個体にまで増加している.再導入当初は兵庫県但馬地域にその繁殖地が限定されていたものの,2012年には京都府北部での野外営巣が確認され,2016年以降は徳島県,島根県,鳥取県,福井県,石川県,栃木県と西日本を中心に関東にまでその営巣範囲を拡大させている.コウノトリの野生復帰事業において,一部の放鳥個体には再導入個体群の行動圏や生息地等を把握するためにGPS発信機が取り付けられている.これらのデータはアルゴスシステムによって捕捉される.発信機は日中6:00~18:00の間に最大1時間に1回,位置情報を発信する仕組みである.コウノトリの再導入から18年が経過した現在,これらのデータを活用し,今後のコウノトリ野生復帰をさらに頑健なものとするため,演者らは対象となる再導入コウノトリの生息適地を検討した.
発信機データについては,但馬地域以外への再導入個体の飛来が頻繁に記録されるようになった2010年以降から2020年までの10年間分を用いた.対象となった25個体の放鳥時の年齢は0~3歳であった.得られたデータをGIS上にプロットし,まず,都道府県レベルでの飛来頻度の多いエリアを精査した.次に各個体のデータを活用して,飛来頻度の多い地点を地域レベルで精査し,生息環境の選好性を調べた.
 コウノトリの飛来頻度の多い都道府県は豊岡市のある兵庫県が最多であったが,その他には徳島県,千葉県,和歌山県,京都府,福井県,滋賀県,愛媛県などが上位となった.これらの都道府県の大半はデータ取得期間の中で新たな放鳥拠点や営巣地となった場所で占められた.本発表では地域レベルでの解析結果も踏まえてコウノトリの生息適地について議論したい.


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