| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-257 (Poster presentation)
中学校理科では、第3学年において、これまで学んだことを踏まえて自然環境の保全について学習を行う。ここでの学習では、自然と人間の関わり方について、多面的、総合的に捉えさせ、自然環境の保全について科学的に考察させることがねらいとされており、このとき、生徒が科学的な根拠に基づいて意思決定する場面を設けることが大切であるとされている。また、意思決定を行う場面では、同時には成立しにくい事柄をいくつか提示し、多面的な視点に立って様々な解決策を考えさせることなどが求められている。本研究では、地域メダカの保全を取り上げ、生徒が野生のメダカを絶滅から守るために市販のメダカを野外に放流するかどうかという意思決定を行うことを課題とした授業を行った。このとき、ペットショップなどで売っている体色の黒いメダカは野生型と呼ばれるが、品種改良種であるヒメダカの体色遺伝子を持っている可能性があることに注目し、第3学年で学習したメンデル遺伝と顕性、潜性と関連づけて生徒に遺伝子汚染や国内外来種という問題に気づかせた。そして、「保全を目的とした放流には問題点はあるが、なにか行動をしなければメダカは絶滅してしまうかもしれない」、「市販のメダカの放流は確かに問題であるが、既に現在野生にいるメダカには市販のメダカの遺伝子が混じってしまっている」という、放流することは問題であるが、放流をしなくても今起こっている問題は解決しないという対立した状況を設定し、市販のメダカを野外に放流することの是非を考えさせた。本発表においては、授業実践を通して生徒が何を根拠にどのような意思決定を行ったかについて報告する。