| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-261 (Poster presentation)
自然地域における人々が興味を抱く地点(POI:Point Of Interest)の把握は、その場所の持つ様々な文化的サービスの発揮のために重要である。POIの実態が分かることで、利用者管理の適正化や新たな利用ニーズの発掘等、管理者は具体的な施策を実施することができる。
近年はインターネット網と携帯情報端末の普及により、ソーシャルメディア上でのPOIの活用が急速に発展しつつある。これは、森林の中で歩いてアクセス可能な、トレイル沿いにあるPOIでも例外ではない。ソーシャルメディア上のPOIは、「映える」写真スポットとしての拡散や、Pokémon GO等の位置情報ゲームでの拠点とされる等、これまで考えられてきた森林来訪者とは異なる層による、新たな利用形態の来訪を誘引する可能性がある。その来訪者は、POIがもたらすサービスのみならず、アクセスの前後でも森林生態系がもたらす文化的サービスを享受している。自然と接する「経験の消失」が課題となった現代において、文化的サービス発揮の機会を増大させていくような、森林トレイルの活用が急務である。そのためには、ソーシャルメディア上でのPOIの実態を把握し、その利用実態について明らかにする必要がある。
そこで、本研究では特定の山域の森林トレイルにおいて、複数のソーシャルメディアを用いてPOIデータを収集し、その分布を可視化した。そして、POIの対象を、その名称や説明等の属性情報から分類した。これにより、POIの対象とされる森林トレイル上の施設や構造物、自然物等の特徴を明らかにした。さらに、POIへ寄せられた口コミや画像投稿データをFoursquareとGoogleマップ、Niantic Wayfarerから取得し、享受された文化的サービスの内容と量を評価した。
本報告においては、水郷筑波国定公園に含まれる、茨城県の筑波山地域における事例研究の結果を紹介し、データベース化されたPOIの情報による森林生態系の文化的サービス評価の活用可能性について議論する。