| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-262  (Poster presentation)

保存ルールの異なる複数の写真データセットを用いた、種分布記録の作成の試み
An attempt to create a species distribution record using multiple photographic datasets with different preservation rules

*白川勝信(芸北 高原の自然館)
*Katsunobu SHIRAKAWA(Geihoku Natural History Museum)

スマートフォンに内蔵されたカメラで撮影された写真には、Exifに撮影日時と場所が記録されるため、個人が撮影場所を地図上で確認することに留まらず、「いきものログ」などの情報共有システムへの登録を容易にしている。
一方で、GPSを内蔵していないカメラで撮影された写真には、ファイルそのものには撮影データが記録されていない。このように、分布記録の資料として見たとき、写真データは、ファイルそのものに位置情報を含む画像と、位置情報を含まない画像(フィルムを含む)の2つに分けられる。
ただし、ファイルそのものに位置情報を含まない画像であっても、それぞれの写真が撮影された日付と場所の情報があれば、分布の証拠写真となり得る。例えば、ポジフィルムのマウントに、撮影日と撮影場所が記録されていれば、その情報を入力することによって、分布データを整理することができる。
ここで課題となるのは、デジタルカメラで撮影された写真の「保存ルール」が撮影者によって異なることだ。画像管理ソフトを使った整理のほか、撮影日/撮影場所/イベントなどのフォルダによる整理、ファイル名そのものを書き替えての整理など、撮影者によってその方法は異なる。そこで、ポジフィルム、位置情報を含まないデジタルカメラ画像、位置情報を含むデジタルカメラ画像のセットを用いて、生物の分布資料として整理した作業手順を紹介する。
将来的にはフォルダ構造やファイル名などの情報から、自動的に位置情報を整理する技術が現われるかもしれない。しかし、フィルムを含む写真データそのものにアクセスできなければ、せっかくのデータは消滅してしまう。本報告は、多くのナチュラリストが撮りためた生物写真からデータベースを整備する手間の省力化を示すことで、貴重なデータが技術的なギャップに消失しないための保全策につながることを期待する。


日本生態学会